アラバマ物語

1960年頃のアメリカ南部　人種差別がひどい（今もそうかもしれませんが）
裁判で黒人の弁護をしたからって理不尽にも顔に唾をはきかけられたら・・・
自分なら相手を殴ってしまったでしょう
でも主人公はぐっとこらえてハンカチを出しゆっくりと唾をふいて相手を睨みつけた
偉いと思った（子どもが見てたのもあるけど）
でも棒を持って殴ってきたら・・・、ナイフを持って切りつけられたら・・・
そのくらいならうまくよけられるかもしれないけれど
鉄砲もってバンバン撃ってきたら射撃の名手と言えど逃げようがない　やられるしかない　子どもは孤児になっちゃう
人間の尊厳を守るのも大変だなと思いました

グレゴリー・ペックの演技力、小さい兄妹の目から見た南部アラバマ州の田舎町の不思議な世界、そして冒険。

約２時間のドラマですが、中々奥深い内容を、育ち盛りの小学生の目で見せてくれた、本当によくできた作品です。
一つの筋は、少女スカウトの目から見た子供のころの不思議な思いでとパパの力強さ。「スタンド・バイ・ミー」のような、子供のころのわくわくするような冒険、そして育った町の記憶、湿気や温度までも感じれるような微妙にデリケートな描写力には驚きました。謎の人物”Boo”さんとは・・・。

もう一つは、１９３０年代の貧しい南部の生活、そして人種差別の問題です。無実と思われる黒人男性を白人の村社会が容赦ない裁判風景。ペックのフィンチ弁護士による力がこもった弁論を通じてたっぷり見せてくれます。アメリカ南部って、微妙にゴシック的な湿気と古さでひかれるところもありますが、狭いムラ社会の怖さ・・・・。

この２つの軸がとても良く組み合わさってすばらしい作品になっています。改めてこの作品の完成度の高さに驚きました。

原作はハー・パーリーさんの代表作でしょう。彼女の子どもの頃の親友、トルーマン・カポーティの「遠い声、遠い部屋」は、この作品と対になるような、南部の微妙な雰囲気と懐かしさを感じる作品です。良かっったら読んでみてください。

名作ですがインパクトに欠ける作品。時代的に黒人差別社会なので当時はインパクトがあったのかもしれません。

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時代は1932年。まだまだ公民権運動の起こる前のことである。
そんな時代は、黒人の冤罪がとても多かった。
そして、この映画に出てくる裁判はその時代を反映するものであった。
陪審員は全て白人。あきらかに供述に矛盾があったとしても、黒人の被告は不利な判決を受けていた。これはリンチの代替物であったためである。この時代になると、一般的なリンチは減少して、逆に黒人の死刑判決が増えていったのである。特に南部での死刑の数が多かったのは言うまでもない。

これは昔の話ではなく、今もアメリカ国内で潜在的に持ち合わせている死刑制度の問題でもある。これは、日本に於ける死刑制度と違い、人種によって死刑判決の数が大きく違うからである。
72年にレイプ犯への死刑求刑が禁止されるまで、黒人が法の下で簡単に合法的に殺されていたのである。
それを知れば、これ映画が公開された事自体、勇気ある訴えであったと思う。

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弁護士役のグレゴリー・ペックがいい味を出している。現代からすれば、古きよき時代のアメリカの物語といえるだろう。

子供が入っても誰にもとがめられない法廷。しかも法廷では、みんな黙って話を最後まで聞いてくれる。現代の法廷ものでは、とてもありえない話。

「法廷戦術」の盛んな現代ならさしずめ、『被告人は質問されたことだけに答えるように』とか『異議あり。この過去の裁判記録からすると、今の証言は証拠能力に欠けるものと思われます』とか『異議を認めます。今の証言はなかったことにしてください。記録から完全に削除するように』とか、途中でイチャモンのオンパレード！　最後までしゃべらせてくれない！

他にも、証人を故意に怒らせて陪審員にあたえる印象を操作したり、陪審コンサルを雇って裁判を思い通りにしたり。こんなんばっか…。いつから裁判は、こんな風になってしまったんだ？　その点、この映画では、まともに裁判が進行しているので、それがかえって感動！

結論がああいう風になるのは、仕方ないといえる。そもそも、陪審員が全員白人なんだから…。それがいっそう、物語をリアルに感じさせる。だいいち、あんな演説で簡単に覆るようなら、逆に納得いかないだろ？

しかし、偏見とは恐ろしいもの。そういえば、謎の隣人のブー。現代でいえば、さしずめヒッキーの青年だろう。人一倍寡黙で、恥ずかしがり屋のためか、ただずっと家に引きこもっているだけなのに、あれだけ近所の人からボロクソに言われて…。ブーからすれば、とんだ災難だよ。本当は、子供思いの、心やさしい青年なのに…。ていうか、こんな時代にヒッキーがいたなんて！！

ところで、今、隣の家にヒッキーの青年がいたら、スカウトみたいに純粋まっすぐに微笑むことのできる人間が何人いるんだろう？　映画の中の偏見に毒された人たちを見て、その頑固さ偏屈さを笑う以前に、自分達も知らず知らず、同じような偏見に毒されてはいまいか？　人間は、偏見の最中にいると、かえって偏見の中にいるのが分からない。偏見は誰でも知らないうちに持ちうるものだ。それを子供達の物語で巧みに示している点で、この映画は実に秀逸といえる。