ラ・スクムーン

本作はまずタイトル曲が素晴らしく、一度聞いただけで一発で気に入った。サントラも捜して輸入盤で見つけた時は嬉しかった記憶がある。ジョゼジョバンニは実際に刑務所暮らしの経験があるという事で暗黒モノを得意としていたが、本作は彼の一番上出来の作品だと思う。以降のアランドロンとの「暗黒街のふたり」「ルジタン」「ブーメランのように」はいずれも感心しない。変に前科者の悲哀を強調しずぎて感傷的すぎる。本作はそういう面が一切なく、特にお気に入りは敵方のアジトに階段を登って単身乗り込んでいくラストシーンだ。死ぬ場面を見せずにエンドクレジットになり、間違いなく殺されるのが明らかなのだが、あえてそれを画面に見せずに終わるのがいい。日本の任侠映画の様な粋を感じる。ジャンポールベルモンドは「いぬ」「ボルサリーノ」もそうだが、こういう暗黒街の人間をやらせると一番輝く。

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もう姿を見かけなくなって何十年も経ってしまって、音沙汰も聞かないまま先日朝，彼の亡くなったニュースを新聞で知った。８８歳か。６０、７０年代のフランス映画が好きならば彼はアラン・ドロン、イブ・モンタン、ジャン・ルイ・トランティニャン、リノ・バンチュラと共に決して外せない役者だ。公ではベルモンドなら一番に「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」のゴダール作品が挙がるのだろうが自分はこの２作に殆ど思い入れは無い。当時としては斬新で革新的だったのだろう。自分はリアルタイムで観ていないので、後続の同系の、もっと発展した作品に先に接してしまったせいか、後追いでこの２作を観ても「そんなに凄いか？」ってなってしまった。（特に「気狂いピエロ」は退屈で途中、眠ってしまった。）天下の名作にケチつけてしまったが、自分にとってのベルモンドは、ゴダール以外の作品群にこそ彼の魅力を感じる。容貌を生かした、ひょうひょうとしたキャラでフィリップ・ド・ブロガと組んだ「リオの男」「カトマンズの男」「大盗賊」「おかしなおかしな大冒険」、アンリ・ヴェルヌイユと組んだ「太陽の下の１０万ドル」「華麗なる大泥棒」「恐怖に襲われた街」等の彼の身体能力を生かしたアクション物、ジャン・ピエール・メルヴィルと組んだクールなギャング物「いぬ」、アラン・ドロンと人気絶頂期にがっぷり組んだジャック・ドレーのこちらもギャング物「ボルサリーノ」、そして拾い物的に面白かったのが本作だった。まず、メインテーマの音楽が一発で気に入った。自分にはベルモンドの音楽だったら、本作と「ボルサリーノ」、クロード・ルルーシュと組んだ、作品自体は感心しないのだが、当時名コンビだったフランシス・レイ音楽の「あの愛をふたたび」がベスト３である。本作は彼オハコの暗黒ギャンング物で、実際にムショに入っていた経歴を持つジョゼ・ジョバンニが監督で、本作で俄然彼に注目したのだが、その後はストーリーを変に感傷的にばかり持っていってしまった「暗黒街のふたり」「ル・ジタン」「ブーメランのように」とドロン御用達みたいになって変な作品ばかり作ってしまった。なので本作は、彼の監督作品で唯一自分が好きな作品なのだ。ラスト、死ぬのを覚悟して単身、相手のアジトに向かって街路の、長い階段を淡々と上っていくシーンをロングで後方から撮ったアングルで、上記のメインテーマがかかるクライマックスはそのクールなカッコ良さに痺れた。