天才マックスの世界

非ハリウッド系の才人、ウェス・アンダーソン監督作品。
オフビートなノリを持つ、不思議な雰囲気の青春映画です。

邦題からのイメージとは違って、主人公マックスは学業不振で落第寸前。ただし、思い込みと行動力、それにプレゼン能力だけは天才的。はっきり言えば人間としては少し、否かなりバランスが悪い。そんな彼が、恋や友情を経て、ちょっぴり成長していく姿が描かれています。

前半はけっこう辛かった。独りよがりで、犯罪者並み（というより立派な犯罪者）の、やり過ぎマックスに感情移入できなくてイライラしました。マックスの友達を演じるビル・マーレイの、中年男の悲しさと可愛さ漂う魅力がなかったら、途中で観るのヤメてたかも。
でもそこを我慢しているうちに、終盤は不思議に清々しい気分になってきました。よくよく考えれば、少年時代って誰でも思い込みが激しいもんです。子供なりに常識があるから抑制しちゃうけど、タガを外して行動できたとしたら、誰でもマックスになってるのかもしれません。
最初イラついたのには、思い通りできる彼に対する嫉妬もあったのかなーなんて思っちゃったりして。

音楽の使い方や画ヅラもセンスが良くて、どちらかといえばオシャレ系の作品だと思いますが、どことなく80年代の青春映画のニオイもします。『フェリスはある朝突然に』や『卒業白書』みたいな。
もともとそういう作品群が好きというのも、受け入れられるポイントになったのかな。

マックスのキャラクターが特異すぎるので、好みの分かれる作品でしょうが、一部でカルト的な人気があるというのは頷けました。

子どもはすぐばれる嘘をつく。憧れの先生と車の中でちょっと仲良いことしちゃいましたとか。親の職業をかっこよい仕事に言い換えたりて、例えば町工場の親父を従業員の数を２倍にして社長さんにしたりしてとあら私のことかしらなんて。
ローズマリー先生は初恋にしてマックスが幼い頃亡くなったお母さんへの追慕の変わり。
マックスが落第の挙句放校を言い渡される校長室の壁に、子どもの頃落第転校を繰り返した大宰相チャーチルの肖像画が架かっていて涙をみせるマックスに肖像画のチャーチルがやさしく微笑んでいる（後で放校を言い渡された校長先生との和解のシーンがちゃんと用意してあります）なんて優しい場面なんでしょう。
年上の憧れの人から同級生の女の子に視線が動き、息子を信じすべてを受け入れてくれたやさしい父親を医者ではなく床屋ですと周囲に紹介できるようになったマックス。成長したよ。
端正な画面構成と色使いの、死の陰りも見せて、マックスが少し大人になる物語です。

劇中劇『セルピコ』（アル・パチーノ主演の映画）の引用のところで解からないシーンがあったりして、観直したら新しく発見することもありそうな一筋縄では括れない作品でもあります。

なんかいいですね。
後味がまるで透明で。

前作　ハッピーモーテルのモタモタ感はなく
マックスの思考回路とともにポンポンと
展開していく感じが　爽快。
この監督さんの持ち味が　この軽快さなのかしら。

もうちょっと　間隔を置きつつ
　次作にいってみたいと思います。

ウェス作品３作目。
と言ってもここ３週間で３作品観てるからね、だからこいつの作風に免疫が出来たのか、それともこの作品がそういうタッチだからか、本作はその中でも良く言えば捻くれていない一般受けしそうな、悪く言えばまとまった、パンチが効いていない印象を受けた。
奇妙なアイデア盛り沢山、基本的なスタイルはこの頃から変わりはないんだけどね。

ありえないくらい強烈な個性を持つ主人公なんだけど、実はおいらが持つものを若干強調しているに過ぎなかったりする。
そしてそれに気づいた瞬間、急にいとおしく感じちゃったりして。
勿論あそこまでの行動力はありませんが（笑）でもどこか共感できる部分があったな。

やはり映像と音楽には独特のセンスを感じる。
キッチュな色使いはやや控えめな感も受けるが、シンメトリーを意識した構図、独自のリズム。
会話シーンの切り替えしなんかは個性的な味わいがある。
本作は音楽も見（聞き）所かな。
ＢＧＭじゃなくって楽曲としてきちっと聞かせる使い方が多く、その選曲センスがモノを言う。
なかなか魅力的な世界を作り上げてますな。

星★★★★☆　ウェスお得意の人生賛歌。軽くて面白いから観易いよ。

なんだこりゃ？
と思いつつ、このわけわからんアホらしさに実にはまる。

面白いです。

でも好みはあるかもね。