あるスキャンダルの覚え書き

　この作品は男子生徒と淫行する女性教師シーバの話がテーマではなく、そのスキャンダルに関わる同僚のバーバラの心理がメインである。バーバラ達はじわりじわりと私達に違和感や恐怖感を与えながら、私達の心に迫ってくる。よってこれは心理サスペンスの形を取ったサイコホラーではないか？
　バーバラもやはり人間であり、自分一人では寂しいのだろう。孤独感を癒し、ペットの猫のような対象を絶えず探している。彼女のすごいところはその行動力だ。対象を見つけたら執拗に追いかけて優しい言葉をかける。ただ、彼女の優しさ？は相手がどのように思っているかを無視した、あくまでも自分本位な一方的な偏愛？である。
　それは日記という形の独白で私達に示される。それは自己満足的なものであり（本来そういうものだが）、興味を抱く対象物（者ではない）の一部である髪の毛やレシート等も貼り付けながら、相手を自分の一部として私物化する。相手に対する配慮もなく、相手が自分をどう考えているのかも全く気にもしない。
　それに比べればまだシーバの方が人間らしい。自分に好意を寄せる（主に性的なものだが）男子生徒に対して、真摯な対応？をして本能に逆らわす、本能の赴くままにその関係を深めていく。教師と生徒という関係の自覚がないのが問題なのだが・・・・・
　そして何よりも恐ろしいのはこの二人は教師であり、バーバラに至ってはおそらく40年近くも教育に携わり、数え切れないほどの無垢な生徒に関わった？と推測される。
　ただ、バーバラ達はあまりにも行き過ぎていたが、彼女達のような面が私達に全くないと言い切れる人はいるかな？その意味で私達にとっても真にサイコホラー？な作品と言ってもいい。
　私達はこの行き過ぎてしまった二人の女性の姿を追いながら、自分の中の彼女たちを自覚して、うまくコントロールしていかなければ・・・・・・・・・・。

独断オススメ度　　　８８　　　　　　　

バーバラの演技に思わず拍手度　９５

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バーバラはきっと治療が必要な人なんですよね。
彼女が孤独なのは、心を許せる人が回りにいないからではなくて
回りの人と良好な関係が「継続的」に築けないから
結局独りなんだと思います。

シーバとの付き合いの流れは、きっと今まで何回も繰り返して
きたことなのでしょう。
普通の（まともな？）人間なら、人付き合いに失敗した時点で
己を反省し、人との距離の取り方を学ぶはずです。
ラストでまた同じ事を繰り返そうとするバーバラを見て
「しかるべき治療を」と思わざるをえませんでした。

そしてシーバは、よくも悪くもいたって平凡な人間です。
欲に溺れ、罪を犯し、損得を計算し、しかるべき罪をおいます。
見ていてかなり苛々しますが、こんなどうしようもない人
いるよなぁ、という「とほほ」な人です。

私にはかなり後味の悪い作品です。バーバラがもう少し
「歳のせいかちょっと偏屈になって我がまま言っちゃう」
困った老人として描いてくれていたら、
とほほなシーバとの人間ドラマとして見られたんだけど
ごめんなさいっ、バーバラは「サイコ」にしか見えませんでした。

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新任の美術教師シーバが教え子と関係をもってしまい、それをベテラン教師バーバラに知られてしまう。バーバラは日記だけに唯一本心を綴れる孤独な毎日で、シーバと親しくなり、やがて彼女の弱みを握り支配しようとするようになる。

シーバは母親との関係はよくなかったらしいが経済的には恵まれ、美しい容姿のお陰で苦労も少なかった。20歳そこそこで倍近く年上の夫と知り合い結婚し、手のかかる子供達との生活で疲れ、漠然とした欲求不満が蓄積している。社会経験の浅いお嬢様育ちで人を警戒したり、先行きを懸念したり、深く考えることをあまりしない。

それに引き換えバーバラはオールドミスで親しい友人もいない。身内にも本心を吐露する事が出来ない孤独な生活。ある意味、狡猾でシーバとは正反対の人物である。

そして15歳の男子生徒。とはいえど恐るべき「男」。15歳の男の子が大人の女に夢中になってしまえば殺人でも起こしかねない盲目状態と言うほうが自然にうけとめられたが、この映画ではいけないと思いながらも別れられないのは女教師のほうで、生徒は自分の家庭のことでも女に同情をかうような嘘をつき、悪口を言った同級生と取っ組み合いをして気を引くこともできる。別れようといわれても執拗に食い下がり、女心をもてあそぶことも出来るのだ。学校にばれたら掌を返したように教師の前から去り案外クールで今風であるのかもしれない。

彼のキャラクターが話を面白くし、子どものくせにやり手の生徒と、経験豊富な初老の女に上手く扱われたお人よしの素人教師という構図が浮き立ってくる。
夫は周囲の多くの人が惹かれる妻の魅力と無防備さを良く知っていたようだ。受け入れられないような事態にはなったが、自分にも責任の一端がある、いつかはそうなると感じていたのかもしれない。ラストで夫に媚びたような、請うようなシーバの笑顔が実に彼女らしく上手い。4人の人となりや心理が際立って迫ってくるところがとても面白い。92分が短いとは感じない、無駄の無い見応えある内容だった。


◆Congratulations　1000レビュー！！！　パープルローズさんへ
◆1000越えは「偉業」です。6人の先達様たちにも深い敬意を込めて。

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何が恐いってジュディ・デンチの入浴シーン！

じゃなくて、

ジュディ演じるバーバラが恐い！

もう観てるのが苦痛でしてね。
ケイト演じるシーバは実にイラつかせてくれる！
あんな小僧ッ子の何が良かね？
あたしゃ断然ビル・ナイ派。大好きビル・ナイ。いい夫じゃないか。不倫の末とはいえ。

そんでもってシーバも愚かながらバーバラも愚の骨頂。真骨頂。そんなやり方でしか友達を作れんのか？そんな自分のペットみたいな友達欲しいか？というかソレ友達じゃないから！
辞書を見てご覧よ。『相手を完全に支配すること。』とは恐らく書いてないぞ。
もっと素直に可愛いおばしゃんになっちまえば良いものをなぜそこまで複雑怪奇にしちまうんで？

バーバラもシーバもどっちもどっち。どちらの見方にもなれん。簡単に心を開くのも考え物だとつくづく思いましたな。相手がどん人かも知らずに。親友だって本当の本当に何を考えているかなんてわからんのだし。お互い適度な距離は保ちつつ付かず離れずが一番良かばい。と改めて思いましたよ。そんなんじゃ寂しい？いやいや、それくらいが良か思うけどねえ


ラストにはさらなる餌食の予感を残し後味最悪。どうもアリガトウってなもんでコメディでも観て大笑いしたいや！と思うのでありました。

かなり見ごたえありですね。咀嚼のしがいがあるというか。
女教師と１５歳の教え子とのスキャンダラスな関係。その事実を知った初老の女教師バーバラが、
その秘密をチラつかせながら、シーバを自分の思い通りに操るといった話。

転任してきた美しく魅力的なバーバラに心惹かれる気持ちはわからなくもないが、
ひとり彼女への想いを募らせていく様は、ちょっと異様でストーカーへの序章を観ているようだった。
定年間近の歳までずっと一人暮らしというのは、想像を超える圧倒的な孤独なんだろうなぁ。
誰かと分かち合いたいとか、親しくなりたいとか、理解して欲しいとか、そんな感情は誰しも抱くが、
それを相手の気持ちまでコントロールして自分の意のままにしようとする手段を選ぶ人間は、やはり普通ではない。
妹の「力になりたい」って言葉を無下にするのは、人の思いやりだったり好意を汲み取れない人間ってことだし、
自分の思い通りにならない世界は認めないって考えの持ち主だから、彼女には何も残らない。だから孤独なのだ。
猫だけが傍にいてくれる存在ってのが、さらに哀れだった。
自分でもきっとわかってるはずなのに、良好な人間関係が築けない。彼女はきっと病気なんだと思う。

そんな魔女のようなバーバラに弱みを握られ、強請られ、言いなりにならなければならない。
たった一度の反抗が、犯罪者や家庭崩壊へ繋がり、シーバにとっては破滅となるから。
次第にエスカレートしていく要求を甘んじて受けているシーバとバーバラの主従関係が綱渡り的でスリリングだ。
人の日記って気になるけど、バーバラのむき出しの欲望だったり本音が綴られた日記を覗くこの映画は、
安易に覗いてはいけなかったなと後悔させるような出来栄え。

バーバラを演じたジュディ・デンチの演技は、さすが名女優といった感じ。
あれだけの孤独を背負った気難しい病んでる人物像を体言してるからねぇ。
それに負けず劣らず、ケイト・ブランシェットも好演。最後の鬱屈した感情が爆発するシーンには、気迫を感じる。
ケイトはあんまり好きなタイプの女優ぢゃなかったんだけど、この映画を観て、その美しさに惚れたわっ。
化粧っ気がなくても、あの美しさ。振り乱してても、美しい。