ジョンＱ　最後の決断

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デンゼル・ワシントンが安っぽい犯罪者になるとは思ってなかったが案の定、骨太なテーマだった。

デンゼル・ワシントン演じるジョンQの子供が重い心臓病を発症するが工場の勤務時間を会社都合で半日にされていた為
高額の医療費が保険で落ちず病院側から諦めるよう告げられる。

ジョンは様々な機関に働きかけるが全て断られる。
果てはTV局にも掛け合うが無駄だった。

業を煮やした妻に「何とかしてよ！」と強く言われたジョンは
何と、人質を取って病院に立て籠もり子供の手術を要求するというとてつなく無茶な行動に出た。

途中、老練な警部補ロバート・デュバルとの交渉や保身一点張りの本部長レイ・リオッタが強硬した狙撃の失敗等を挟んで話は進行するがジョンが持っていた銃に弾は入っていず
最初から自分が死ぬ事によって息子に心臓を移植しようと思っていた事が分かる。

ラスト、自動車事故によって奇跡的に運ばれた心臓によって息子は助かる。
父親が息子の為に病院に立て籠もるのと同様いかにも映画的ではあるが愛情深い父親役はデンゼル・ワシントンに似合っていた。

アメリカの医療保険問題を扱ったマイケル・ムーアのシッコを観たあとに観ると分かりやすいかも知れないなぁ、と思いながら観ました。単純に言うと、保険の掛け金をたんまり払っている金持ちしか救えないアメリカの民間医療保険制度、クソみたいな制度のせいで心臓病の息子が救えない、そこから始まるジョンＱの奮闘という話。

シッコのときも思ったが、本当、クソみたいな医療制度、そして医者たちの考え方。あの作品は問題提起だけで終わったけど、この作品は少しだけ医の救いがある。物語だから、そうでなければ意味がないですね。嘘くさくてもね。ただ、シッコをみたときも思ったんですが、いずれは日本もこうなってしまうのかな、と思ってしまう私がいます。そうはなってほしくないんだけど・・・

デンゼル・ワシントンが父としての姿をしっかりとみせてくれます。自分も父ですが・・・ジョンＱみたいなことができるのだろうか。

５点

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臓器移植法改正案の親族優先事項が話題になっていて、この映画を思い出すって方が多かったので借りてみました。
映画の内容、主人公の行動や、アメリカの保険情勢など、いろんなことを考えさせられる映画ではあるのだけれど、私の場合一番感じたのは恐怖でした。
自分自身脳死になったら臓器は移植待ちの人に使って欲しいと思っていて、カードも持っています。

でもなんというかこの映画を観たら、ドナーは臓器でしかないわけで、物なんだなって感じてしまった。
いや、自分でも脳が死んでしまったら生き返ることは無いわけで、死んでゆくのを待っているだけだってわかっていたつもりだったのだけれど。
助からないと決まったら、その人は人ではなく臓器の塊で、もう命じゃないんだなって、急に寒くなってしまったというか。
助かる人のために役立つなら本望、と思いたいけれど、バンバンザーイみたいに喜ばれる後ろ側に死んだ人がいるんだよなって思うと、本当に複雑でした。
映画の感想としては、ダメダメですね。。。でも本当怖い。

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「息子の名前をリストに載せろ！」
それは、「ほかの誰かを押しのけてうちの子を助けろ」と言っているに等しい。
何をしてでも家族を守る強い父親がアメリカの理想かも知れないが、その姿にどうして感動など覚えられようか。父親が息子を助けるために戦ってる？　「父が」「戦う」、これが美しく聞こえる人もいようが、強盗強要に美名をコーティングしているだけである。

脳死からの臓器移植に私は反対なので、それでますます鼻白んでしまうのかも知れない。
そもそもアメリカ人は、人工妊娠中絶にはああもヒステリックに弾圧するのに（中絶手術を行う医師がボディガードを必要とするほど）、臓器移植に関してはなんの疑念も持っていないように見えるところが、ますますエゴイズムの塊のように思われる。

「俺の心臓を取ってマイクに移植しろ」
「適合についてはチェック済みだ」
んなばかな。

「ここはまだ病院だ。使える心臓があるなら無駄にすることはない」
臓器を完全に部品とみる思考がここにはある。

ジョンＱは、銃の中に他人を殺す弾丸を持っていなかった。だから善？　ふざけてはいけない。銃を他人に向けて、その意志に反した行動を強要した。銃とは、中に弾丸が入っているかどうか外見からはわからないのだから、銃を向けるという行為を無理やり善にこじつけることはできない。あくまで自己満足だ。
ジョンＱが投降する場面で、野次馬から「私も同じことするよー」という声がかかった。してはいけません。犯罪です。
あと、イントロだが、映画として必要だろうか。あれはなんのため？　観客の溜飲を下げるため？　院長は、わかりやすい善人ではなかろうが、では悪人か？　強要の結果として、マイクを待機者リストに載せ、手続き費用を支払った人には違いあるまい。

ここに書き切れないくらい鼻白む展開が目白押しなのだが、デンゼル・ワシントンといい子役といい、感動級の名演技なのがこれまたしらけるのであった。