大統領の執事の涙

人種差別つながりってことで邦題は「ルワンダの涙」にひっかけたのか、
ちょっと的外れな感じが否めませんなー（苦笑）。

ま、それはいいとして。

ドラマが薄いという批判もちらほら見え、まぁその通りなんだけども
そもそもこの主人公、目の前で父親を白人に殺された過去を持ってるのに
白人に対する憎悪なんかカケラも無いのだよね。
（少なくとも観ている我々にはそれが見えない）
生き抜くために「素」と「白人向け」の２つの顔を持っているとか言ってても
そこに葛藤があるようにも見えなかった。イキイキと働いてたじゃん（笑）。
公民権運動に身を投じる息子にしても、あの家庭環境にいてなんで？って感じだし、
活動を始めるまでは自分自身がひどい差別にあったって描写もない訳で。
（近所で悲劇が起きたエピソードはあるけど・・・）

ってことで、なんとなくこの物語は最初っから人間の心性を根拠としたドラマ性を
排除しているように思える。
大統領執事たる主人公を狂言回しに据えた現代アメリカの歴史絵巻・・・なのかなぁと。
いや、それはそれで面白かったっす。
豪華キャストによる歴代大統領の素描も楽しかったし。

それにしても黒人大統領の登場はやっぱり隔世の感がある。
この半世紀の変遷はものすごくドラスティックで、
歴史そのものがドラマであり主役なんだってこと・・・かな。

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　アイゼンハワー大統領からレーガン大統領まで執事として仕えたお父さんと公民権運動に参加していく息子との確執の話。

　アメリカの差別の歴史の勉強になる映画で誠実に作られている映画だと思いました。
　綿花園で奴隷として働く主人公と主人公の両親は酷い扱いを受けているところから始まり、盗人になるけど。執事としてめきめきと成長してホワイトハウスで働くまでになる。

　開始25分でホワイトハウスまでたどり着いちゃって、だいぶ運がよくて幸福な主人公だと思いました。そっから主人公はアイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、ニクソン、レーガンと歴代大統領の元で働き。息子は差別をなくそうとファミレスで座り込みしたり、乗ってたバスがトリプルKに襲撃されたり、キング牧師と運動したり、ブラックパンサー党に入ったり。
　アメリカの差別や悲劇を主人公家族を通して見せていきます。そういうアメリカの負の歴史をなぞってるだけかもしれませんが描くのは素晴らしいことだと思いました。

　けれどもその歴史と共に描かれる家族。主人公は白人に逆らわずにひたすら仕える。息子はそんな父がわからず運動に熱をあげていきます。
　この家族のシーンが結構長いこと描かれますが、正直そんなに面白味を感じることができなかったです。反発しあう親子を時代と共に描いていくのもこれまた教科書的で真面目な展開。
　主人公が執事の仕事をやめるきっかけになる晩さん会にゲストで呼ばれるのもレーガン夫人に誘われなかったら動かなかったとこだと思うし。確かに上司に黒人たちの労働条件の改善を要求したことがきっかけだと思いますが、ちょっと受動的すぎると思いました。
　主人公のモノローグも多用されてますが、フォレスト・ウィテカークラスの俳優さんなら自分の気持ちを説明しなくてもお芝居で表現できると思いますが、「私はこの時」と自分の気持ちを説明していきます。
　大統領たちも聖人君子で黒人のことを理解する人たちとして描かれたり。ニクソンだけネガな描かれ方ですが、それでも偉大な指導者として描かれる。

　アメリカの近代史を勉強できて、自由の国と言われてるけど全然自由の国じゃないと知ることができる映画でした。

2009年にオバマ大統領が誕生した時の熱狂は凄まじかったと記憶しています。それはこの映画にも描かれているような人種差別を経験した世代が正に有色人種が米国の最高権力者の地位に着くのを目の当たりにして米国の自由と平等を体現したからに他ありません。法律的に平等が保証された事以外にもベトナム、イラク戦争での極限状態での戦友経験、それとハリウッド映画の人種間融和のプロパガンダ効果により相互理解が
すすんだようにも思えました。
この映画のようにオバマ大統領を一つのゴールとしてそれに至る過程をホワイトハウスの執事の眼を通して描くとこのようになりますが現実にはこの過程を知らない世代による人種問題が頻発しています。例えば今現在起きているミズーリー州の少年射殺問題。丸腰の少年を射殺したのは問題だが少年も平気で万引きし注意した店員を押しのけるなどの姿が防犯ビデオに記録されていた様子は６０年代の人種差別と闘った黒人たち
とは別のように思えます。この問題が略奪につながったことも報道されています。
最近の傾向はむしろ経済的な格差拡大が影響しているように見えます。
人種問題はオバマ大統領誕生がゴールではなく昔とは違った形で米国にとり永遠に続く宿命みたなものだと感じます。

驚くべきはこの豪華キャストの面々。
ほぼすべての役に大物が！！

カメオ出演か、とおもわれるほどのチラッと度です。
それを観るだけで楽しめます。

この邦題だと、大統領との友情が生まれて、、、みたいな感じかと思いきや、むしろ、The butler自身の話です。
時代背景と家族の激動の生き方。
それにホワイトハウスがうまく絡んでくる。

この大統領役のみなさんも錚々たる面々が演じてます。
どこまで事実かわからないけど、レーガンがとってもチャーミングにみえました。

Forest Whitaker の安定の演技もさることながら、驚くべきは妻グロリア役の Oprah Winfrey。
うまい！
最初出てきたときは、いやあ、 Oprahもさすがに老けたな〜と思っていたら、なんのなんのどんどん若くなる。
息子がなんとブラックパンサーの党員なんかになっちゃって、父セシルの執事という職を馬鹿にしたときの Oprahの演技がお見事！
さすがの迫力、かっこよかった。

結構いろいろかっさらっていきましたね。さすが Oprah Winfrey。

この監督、いつもおもうけど、ダラダラしたシーンがない。
スピード感があって、見せなくても想像できるようなシーンはすべて省略している。
おそらくこれだけのキャスティングがなければもっとバンバン切っちゃってたかもね。

あまりにいろんなことがありすぎて、さすがに最後のほうはだれてしまったけど間違いない良作。
人種差別が顔をそむけるほどつらく描かれていたら嫌だな、と思って観に行きましたが、そこまでばっちり映してませんでした。
いい感じにユーモアも組み込まれているし大変見ごたえのある演技です。

それにしても執事って大変な仕事だよね。
私のように気が利かない人間は1時間でクビになること間違いなしだね。

おすすめします。

白い天井を見ている年下の権力者から「私は一日何錠くすりを飲んでるかな？」と聞かれたとき、「──だいたい、103錠です。」とホワイとハウスの執事セシル・ゲインズ
（フォレスト・ウィテカー）は答えた。

ゲインズは昔、先輩に言われた。「二つの顔をみせることだ　本当の顔と白人に見せる顔だ　出世したけりゃ　白人を怯えさせないことだ（俺が）教えてやった上品な言葉で話せ　
北部の白人は気の利いた黒人がお好みだ」。

1957年、彼はホワイト・ハウスに就職する。
　　
ドワイト・アイゼンハワー大統領（ロビン・ウィリアムズ）は、今でいう「レーム・ダック」状態だった。大統領は、執務室で美しい絵画ばかりを描いていた。
セシルは、この大統領「アイク」の「リトル・ロック高校」事件への対応（1957年）に感心していた。
アーカンソー州知事フォーバスが州兵を派遣し、異人種融合に反対する地元の白人も大群衆となって学校を取り巻き、黒人学生の登校を阻止しようとしたとき、
「アイク」は合衆国軍を派遣すると宣告して、暫く静観していたが、マスコミの報道が大騒ぎになると、実際に第101空挺師団を派遣し、事を収めた。

そのすぐ後、時期を狙うニクソン副大統領(ジョン・キューザック）がホワイトハウスの執事やメイドのいる部屋へ威圧的に入ってきて、印象をさらに悪くする。
ケネディの悪口を言って、「君ら（黒人スタッフ）の待遇は保証する」と言う。
誰も何も言わない。ニクソンの本質をキューザックが１分で表現している。

「今度の大統領は『お坊ちゃま』だってね。」「大統領のお出ましだ」と、ホワイトハウスのスタッフが噂していると、若いケネディの家族が入場する。1953年1月。
乳児（ジャック・ジュニア）を抱いた白い帽子白い服のジャクリーンが乳児の「ジャック・ジュニア」を抱き、右わきに長女「ミス・キャロライン」が歩き、ケネディは、
全スタッフとI相手の名前を言って握手し、「これからの４年間をよろしく頼む」とケネディが言うと、ジャクリーンは「８年(2期）でしょ」と言う。

誠に颯爽とした入場だった。

しかし、ケネディはやがて「私は一日何錠くすりを飲んでるかな？」とセシルに聞いた。「だいたい、103錠です。」とセシルは答えた。
その薬は、免疫不全の不治の病気を抑えるために必要な毎日の錠剤だった。

幼いキャロライン・ケネディは、セシル・ゲインズが絵本を読んでやっているとき、「フリーダム・バス」のことについて、「叔父さん（ボビー）がそのバスが爆発したと言った」
とセシルに言った。セシルの息子ルイスは公民権確立を訴える「フリーダム・ライダー」で移動中にKKKに襲われていた。ルイスは電話で父セシルに無事を伝えてきた。
セシルはケネディに辞表を渡す。ケネディはルイスの多くの逮捕歴を調査して知っていたし、キング牧師たちのデモを見たことをセシルに伝え、彼を留任した。
ケネディは、「弟（ロバート）が考えを変えた。私もだ。」とセシルに言った。

1964年11月22日の正午過ぎ、大統領狙撃の報が流れ、ダラスのパークランド病院で蘇生と死亡宣告が行われたあと、遺体と夫人、ジョンソン副大統領（機内で大統領に就任）夫妻を
載せたエアフォース１は、ワシントンDCに着き、遺体は海軍ベセスダ病院で司法解剖されたあと、11月23日4時24分にホワイトハウスに無言の帰宅をした。