アーティスト

サイレント映画を最後まで見たことのない私には、とても楽しい映画だった。

ストーリーに関しては、深みはないから、突っ込めばいろいろアラは出てくるのだが、懐かしい昔の夢物語として、就寝前に観たら、いい夢みそう。
レビューの中で、辛口批評の方の推薦されていた作品をぜひ見たくなってきた。

映画の歴史にも興味をもたせるサイレント映画入門としておすすめです。

芸術の分野における職人は「アーティスト」と呼ばれる。
僕は持論ではあるが、アーティストの必要要素は、作品における薀蓄ではないかと思っている。
大体普通の人が理解できるものは、その道を極めた人であれば大抵は対したものではないだろうし、すごいものを作っても認められにくい。
ではその作品における芸術的意図を散りばめれば、何となく「ああ、いいもんだな」と思うもので、そういう作品の説明書的なものがなければ、アーティストの仕事は自己満足で終わりかねない。
何となく悪意があるように聞こえるかもしれないが、そういうわけではなく、ほとんどの人はその作品を四六位中考えているわけではなく、感性でいい悪いを区別するもので、感性に訴え掛けるには、それなりの情報も入れておく必要があるということである。
コーラの瓶が芸術的に優れているといわれても、「ほう」くらいだが、女性の体をデザインしていると言われると、「確かに」と情報により、何となくその芸術性に気づかされることはあるだろう。
別にコーラの瓶が女性の体だからどうしたではあるのだが、若者が飲む飲み物だと言うことを考えると、何となくよく感じる。
この「何となく」が芸術には大切なのである。

昔、映画はサイレントだった。
サイレント全盛の頃は何せ話せないので講談師のような人が説明をしたり、役者がオーバーな身振りで動くことで、その場面を明確に表現をしていた。
トーキーに変わった頃、役者たちはその表現方法に戸惑い、一度は役者を続けるか悩んだことだろう。
チャップリンのようにトーキー時代でも、サイレントの「街の灯」をヒットさせる実力があれば良いが、そもそもそんな才能は稀である。
役者にとってトーキーの出現は表現方法の拡大で、言ってみればひとつの革命である。
革命が起これば古い体制は死に絶えるのが常である。
映画「アーティスト」は、トーキーの出現によって死に絶えるサイレントのスターの物語である。
滅び行く古い文化は、焼き捨てられ、その残骸の中で彼も死に絶えそうになるが、ひとつの光が彼を救う。
それは彼がサイレント世界の中で見言い出し、トーキーの世界で大きな才能を見せたひとりの女性だった。
その女性の輝くばかりの個性に引かれ、彼はもう一度トーキーの舞台の中で輝きを取り戻そうとする。
言葉を発することなく、サイレントの世界の中で培った表現力と、タップとリズミカルな踊りの中で、彼はトーキーとサイレントを融合させることで、生き返ろうとするのである。

映画はアーティストのタイトル通りに、サイレント映画に対し、真摯に打ち込み最後まで曲げようとしなかった男の、職人たる素晴らしさを持っていた。
それは新しいものへの拒絶ではなく、ひとつの道を追求したものの真に純粋な行動だったのかもしれない。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

サイレント映画と言っても、ラストダンス後のもう一回に答える所でしゃべります。
私にはそこだけは理解出来ません。許せないとも思いました。

構図は映画制作サイド（オーナー含む）と主人公ヒロイン＆犬。
とてもシンプルで分かり易くてサイレントらしい、オーバーアクション気味の演技で
古臭さを全く感じさせません。

タップダンスに感動すらします。
しゃべらなければ完璧でした。

歌舞伎を「物語」で観ようとすると苦痛でしかないのに似ている。全く別角度から愉しめる人には良いのかも知れないが。内容的にも現代的な深みは無く、ひたすら空回りを続けるサイレントな試みが空しい。明らかに観る者を選ぶ作品。最初の１０分で体質に合うかどうかはっきりするだろう。

サイレントの時代には『映画は芸術』だったんですよね。

トーキーになって、映画は『娯楽』になりましたから。

まさにその時代に、サイレントのスターは時代の流れを受け止めることが出来ず、時代の流れに乗ったぺピーの２人の純愛。

大スター、『風と共に去りぬ』のクラークゲーブルに似てるなぁ〜と思い、ぺピーはマリリンモンローに似てるなぁ（ほくろだけか？）と外人オンチの私は思ったりしました。

この３Ｄの時代にサイレント映画を撮るなんてすごいチャレンジャーと思いました。

サイレント映画だと集中してみますね。
文字がでない台詞はこっちが推理してみたりして（＾＾）

ラストの踊りはやっぱり圧巻でした。