マザーウォーター

これでいい。
ここでいい。
さきのことはわからないけど、それもいい。

ここで、この瞬間。
手のひらの中にあるもの。
手をつなぐこともできること。
この足で歩いてきた。
ここまで。
たった今、この瞬間まで。
そして、これからの瞬間も。

心は泳いでいる。
自由に。
どこまでも。

明日に行こう。
さぁ、また一歩。
どっちにいこうか。

私でいい。
私がいい。

気持ちのいい映画だったなぁ。
大好き。
でも、特に何も起こらないので、そういう映画の苦手なかたには向かないかも。

大好きなものがいっぱい。
大貫妙子。
金子隆博。
小林聡美。
もたいまさこ。
シンプルで清潔な服。
桜。
水の流れる音。
散歩。
ガラスのコップの音。
コーヒーのにおい。
お豆腐。
すごく久しぶりにするオーブン料理。
ゆっくり、話す。
心の動きについて、話す。
本当のことを話す。
赤ちゃん。
いつも機嫌がよくて、思わずこっちも笑顔。
毎日、新しいものを取り入れて成長する。
生きてる。

実はみんな、生きてる。
流れている。
移りゆく。
どこかに。

やさしい。
私がここに居ていいって思える。
日々、消耗してるな、って認めざるをえない。
よし。
見失わないようにしよう。

水は低い方に流れる。
私も流れていけるかな。

「かもめ食堂」から流れるキャストの４作目。
「人と場所」というテーマだけ決めて創っているそうだ。
監督は若干29歳の新人女性監督。
ポプラは最初の頃、小さ過ぎて大人しくしていたのだけど、撮影の後半は自我が芽生えてきて、ぐずってきて扱いにくくなっていたのだそう。
そりゃそうだ（笑）。
映画の中でも現実でも、毎日成長している。
あんな風に、たくさんの人の手で子供を育てることって、今では幻想かもしれないけれど、なんて幸福なんだろう。

ご飯を自分で作る余裕の無い毎日って、私にはストレス。
ちゃんと、自分で作って食べる時間が欲しい。
キャッチコピーの「明日にはダイジなものだけ持っていく」
そうやって生きたい。
「マザーウォーター」母なる水。
（本当の意味は、ウィスキーの仕込み水のこと。）
水の流れのそばには、人が集まる。
実は、日々、人生は流れている。
観た後、あの空気に何日も浸った。
あそこに居たい。

「かもめ食堂」「めがね」「プール」に続く、特別な事件が起きるわけでもなく、そこにいる人たちの間にゆったりと流れる時間を描いた第4弾。京都を舞台に、ウィスキー・バーを構えるセツコ(小林)、コーヒー店を営むタカコ(小泉)、豆腐店を営むハツミ(市川)ら男女7人の日々を描いた作品です。
小林聡美ともたいまさこに加え、今回は小泉今日子が絡んで、どういう展開になるのかと期待していました。
ゆるさと、飾りっ気なしの雰囲気の中に、もたいまさこと、小林聡美コンビの愛想のないセリフが、心地良かったのですが、小泉今日子は、ちょっと異質な感じがしました。

人が目をつけない街の片隅、鴨川を舞台に、散歩しながら豆腐屋と銭湯とコーヒー店を結び付けるもたいまさこは人の奥深くまでは覗いたりせずに、にこやかで表面的には助け合いの体を取ってはいるものの、根本的には一人で生きていることに喜びと誇りを持っているように感じました。

ここで繰り広げられる日常を切りとって見せる物語は、鴨川の風景は美しいのに、街が生きている感じがしないのです。
そうここで見られる風景は風のようでもあり、かつてどこかで見た原風景です。けれど、これが現実味がないところが、ちょっと異質に思えて仕方がありませんでした。
そしてなぜか、この街の住人たちは京都弁を話しません。その辺がまたちょっと違和感を感じました。
あえて言うならば、現代で生活している空間では決してないところが、逆にこの空間、時間が現代人にとってはとても愛おしいものに思えるのかもしれません。

この作品を見終わったのが　１０時半を過ぎたころ
ドラマ＝対立があるばかりが　映画じゃない
ドラマ＝対立のあるばかりが　人生じゃない
などと思いながら
浴槽の脇にある窓を全開にして　湯船に浸かり
遠くに聞こえる電車の音などを聞いていると
妙な感覚が押し寄せて来ました

思いだしてみれば
舞台はどうやら京都らしいのに
京都弁をしゃべるのは　マコトが買い物をした八百屋だけ
タカコの喫茶店にはメニューもなく
ハツミの豆腐屋にも値段を書いた紙など一枚もない
セツコのバーでも　「○○円です」　という勘定の台詞がない
オトメの銭湯は　のれん一枚ですぐ脱衣場！

現実感のある映像の片方で
印象はふわふわと浮遊するばかり
みんな　商売をやっていても
生の血や肉が感じられない
どこからやってきて何処へ行くの？

この町
もしかしたら
輪廻の途中にある　踊り場
一時の休息の場所…？

ああ　いやいや
これ以上湯船に入っていると　のぼせそう
もう　寝ます

俺はビール派だ

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企画担当者が「かもめ食堂」、「めがね」、「プール」と同じってことで
あの世界観を描きたかったという作品。
これってひとつのジャンルにでもしたいのだろうかｗ

舞台は京都。
喫茶店、お豆腐屋さん、ウィスキー・バーを舞台に男女７人が描かれている。
興味津々な過去をちらつかせ強烈な個性でかさなりあう人々。
ゆったりとして、それぞれの「マイペース」が憧れや心地よさを誘えれば
この作品は成功ってことになるんだろうね。

ただ、私はどうしても違和感を感じ、それはわざとらしさであり、不自然さだった。
やっぱり監督の力量って大事。作品の世界観は監督に一番依存すると思う。

キャスティングは抜群だ。
小林聡美、小泉今日子、もたいまさこ、市川実日子。
「もたいまさこ」は相変わらず凄いのひとこと。
小泉今日子も合いますね、こういうの。