アーティスト

　楽しみにしていましたが、僕にとってはあまり楽しめる映画ではありませんでした。
　モノクロもサイレント映画も好きです。サイレントからトーキーへという時代、そこで消えていった役者にも興味があります。この映画はそんな時代の移り変わりを甘く、優しいラブストーリーに仕立てます。
　あまり甘いので、はっきり言ってちょっと子供っぽいと思います。というのは、もちろんそんなにたくさん観ているわけではないのですが、当時の作品もこんな甘い素直な物語ばかりではないからです。
　作品の中身も、実際の映画界も、もっと大人でドロドロしていたはず――と思えば、こうした心優しい（と一見見える）ファンタジーのような映画が、なぜ今作られるのか、しかもなぜこの手法で？　と「？」ばかりが増えていきます。
　ヨーロッパの映画人にノスタルジーがあるのか、ＣＧアクション全盛で年々子供っぽさをますハリウッド的映画に対する不満があるのではと想像しました。
　それがそれなりに評価を受けたということは、今の映画をつまらないと、実は作り手も観客も思っているということなんでしょう。
　しかし、僕的には、その創作の姿勢において、この映画は方向が違うだけで、ハリウッド製アメコミ映画とそう変わらないと思ってしまいます。
　この作品を観ると、サイレントという手法を選択した結果としては、表現できているのはやっぱりノスタルジー以外にないと思うからです（懐かしさを感じるとしても、大してサイレントを観ていない僕にとってそれは偽の懐かしさです）。ＣＧをモノクロとサイレントに置き換えただけじゃないか、と。
　映画界の内幕、バックステージものとしてはたくさんの名作がありますし、トーキー到来の時代を背景にした作品としてたとえば『サンセット大通り』を思い出せば、『アーティスト』はそれらの秀作名作に及ぶべくもありません。
　演出は凡庸と思います。再会のとき、女性が端役に選ばれるシーンでしたか、女性の足だけが見え、スターがそれに合わせて踊るというシーンの「胸躍らなさ」はちょっと驚くほどです。
　かつてのハリウッドなら、あのシーンを何倍も楽しいものにしているはずです。
　二人の恋は少しも心に迫らないし、何より、主演女優の華のなさが気になって仕方がありません。最後まで、とてもサイレントのスターに見えません。話題のパルムドッグも、『四つのいのち』の犬に及びませんし・・・。
　クラシックな映画が好きな僕としては、残念でした。普通の映画でした。良くも悪くも予想の範囲を少しも出ない、驚きのない作品でした。40点。
　
　

ＣＧ全盛時代だからこそ原点回帰のアイデア勝ちの作品。
サイレントからトーキへと移行しようとしている１９２７年のハリウッドを舞台に、過去の栄光に固執することで落ちぶれていく無声映画の大スター、ジョージ（ジャン・デュジャルダン）と、彼のアドバイスによってスターへの階段をかけあがっていく新人女優ペピー・ミラー（ベレニス・ベジョ）のドラマを、モノクロ映像＆サイレントのスタイルで描き出しています。
ハリウッド創世記の物語なのに、にも関わらずフランス映画なのが面白いです。

見ていてモノクロ、サイレントなことが気になりませんでした。彼らの表情や仕草を見ていると、むしろどんなセリフを話しているのか、そのシーンに相応しいセリフが浮かんで来るから不思議です。
サイレント映画は、セリフが無い分、登場人物たちの色々な心理的表現が音楽でなされているのですね。音楽の存在を再認識しました。

ジョージがぺピーに売れる女優には何か特徴がなきゃね。と口元にほくろを描くシーンがあります。整っているけれど、どこか薄い印象のぺピーの顔が、ほくろ一つがアクセントになって俄然特徴のある顔になりました。結構このシーン好きです。

敢えて映画から音を無くし、色を無くすモノクロ、サイレントというアイデアが見事に生きています。
モノクロサイレントの作品として作る意味は、ＣＧや３Ｄ全盛の今だからこそ、もう一度映画を 改めて映画の原点に帰れと訴えているのかもしれませんね。
過去のサイレント映画へのオマージュを捧げながら、丁寧なストーリーと画面の作り、温かなラブストーリーで包み込んだ本作は、主演二人の上手い演技、音の使い方などが手伝って、極上の物語になっています。
ラストシーンの多幸感は素晴らしいです。ジョージとぺピーの笑顔が素敵な二人の幸せ溢れるダンは粋なラストでした。
特筆すべきはワンちゃんの名演技、カンヌでパルムドッグ賞と、アカデミー賞を受賞した犬のアギーは一番の立役者ですね。

予想以上に素晴らしかった。
無声映画って、チャップリンの映画を見たことがあるくらいで
果たしてどこまで伝わるのだろうか？といぶかしげな感じで見始めたが
初めの５分で一気に惹きこまれていった。
無声だからといって、役者たちは不自然なほどの大げさな演技になることもなく
ごくごく自然に、ごくごく普通に演じているのだ。
そして無声なのに、何故かセリフが聞こえてくるんだ。
ストリー展開が単純明快なせいなのかもしれないけれど
何を言いたいのか、何を言っているのか、間の字幕を見なくてもちゃんと伝わってくる。
そしてモノクロなのに次第に色さえも見えてくる。
これは素晴らしい！の一言に尽きる。
ラストの二人の華麗でスピーディーなダンスには拍手喝さい。
私には納得のアカデミー賞受賞作品。
あと、忘れてはいけないのは、ワンちゃんの名演技。
こちらも素晴らしい！
大満足♪

失礼！　わんちゃん　この映画は君しか見るところがないよ　ワンワンじゃないやWOWWOWでようやくアカデミー賞時期に見てるわけだけど　
５分でこれが現代映画であるとはにわかには信じられないわけで　山田洋二「東京家族」でさえ　何かしらの映画界覇権に関する仕掛けなり戦略があるはずだが　
単純アイデアでヒットしてしまったのだろうか　ワンワン

サイレント手法を取り入れながら　カラー映画現代物につないで行くのかと思いきや図々しく最後まで押し通してしまうのには　とりあえず企画が通ってしまった
ってことはすごいことなのだろうか　単に関わった製作陣がまとめて鈍感で成立したものなのだろうか？　ワンワン

勿論　１０分後に早送りになるわけだが　まず不愉快な水あめのような音楽を思いっきり消すのだけど　音楽が絶え間なく流れているのを我慢するのが
サイレント映画なのかよと　とりあえず日本の観客はTVで白痴耳になっているので気にならないのだろう　話を画面にもどせばプリントの焼き具合が悪いのか　
どうにもくっきりしないモノクロの絵を見ているのは苦痛以外のなにものでもない　一時間経っても字幕が出続ける現代映画とはなんとも倒錯的ではないか　ワンワン

結局　犬が出てくるのを楽しみにしてそこだけ早送りを停止するのだけど　他に映画的瞬間のようなものは何も伝わってこない　単に映画が白黒なだけで　
サイレント映画の香りなどどこにもないのだ　ワンワン

一万倍は素晴らしい成瀬巳喜男の「鶴八鶴次郎」のようなお話が　ド下手くそな演出でひとりよがりに続くのだが　フィルムを燃やして「バスターズ」　
鉄砲バンで車が街路樹にずどんが武の「HANABI」　犬と警官をチャップリン風に演出したと思い込んでるとことか　まあどうでもいいかワンワン

映画は予想と実際に見ることとは大いにずれるのだが　見事なまで予想通りの凡庸なイメージに収まった　まさにアカデミー賞作品であったのだ　ワンワン

サイレントからトーキーになって、映画の芸術性は失われた。かつての映画作家や評論家には、そう語る人も少なくなかった。
その何世代も後の自分には、あまりピンと来ませんが、本作を観るとそんな言葉にも、ある種の説得力を感じます。
台詞に頼らなくても、これだけ素敵な物語とエモーションが紡げるのですね。

数日経ってもう一回観返したら、すごく静かな作品である事にびっくりしました。音声がないから当たり前なのに。なんだか登場人物たちの声を、たくさん聞いたように錯覚しちゃってたんです。
子供の頃に観た古い映画が、頭の中でカラーに補正されてて、大人になって観返すとモノクロ作品だったのに驚いたことが何度かあります。そんな感覚を、久しぶりに思い出しました。


ただ、わずかに残念な点が。
ヒロインのベレニス・ベジョが、1930年代頃の映画女優に見えないんですよね。当時の女優といえば肉感的でいかにも白人らしい顔立ちというイメージがあるので、彼女のスマートさとエキゾチックな容貌には少し違和感を覚えました。
ま、監督の奥さんらしいので、そのへんは色々事情があるとは思うんですけど（笑）。