奇跡のリンゴ

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NHKの「プロフェッショナル　仕事の流儀」で紹介され、大きな反響を呼んだ実話に基づくドラマ。
リンゴ農家、木村秋則（阿部サダヲ）は、もともと農薬に弱い妻・美栄子（菅野美穂）が、年に十数回も散布する農薬で苦しい思いをしていることを知り、それまで絶対に不可能だといわれていた“リンゴの無農薬栽培“に挑戦することを決意します。

温かくて切ない感動のツボを押さえた秀作だと思います。中村義洋監督は、最近外れがないように思います。
予告編からも想像していましたが、改めて、無農薬の農作物がいかに大変な代物かを思い知りました。
わさび、アロエ、コーヒー、にんにくなどなど農薬の代わりになる食品を探す戦いは続きます。が、無謀な挑戦で一家は貧乏まっしぐら。６年目にはついに収入がゼロになってしまいます。
トラックを売り払い、一番遠い畑までは２時間かけて歩きます。そんなある夜、長女が高熱を出し、健康保険は未払で、近所には車も貸す家がなくなってしまうなど、変わり者としてコミュニティから孤立してしまいます。
苦労に苦労を重ねたあたりのどん底状態は、胸が詰まりました。
そんな彼を懸命に支える家族の理解力がいいです。妻や子供たち。そして義理の父を演じた山崎努が口数は少ないのに、とても印象に残るいい役でした。
木村家の家族にとっては、父の夢が彼女たちの夢だったのでしょう。妻も子供達も同じ夢を共有出来たからこそ、成し遂げられた奇跡なのでしょうね。
多くの年月、財産、家族の犠牲が報われやっと得られた成功はとても感動的でした。
11年目にリンゴの花がスクリーンに咲くシーンには胸がいっぱいになりました。

なんかあったかかったです。
物語はベタで
展開もベタで
感動もベタですが
ベタでいいじゃん、と。
そういう心地良さがありました。
観終わった後に監督は中村さんと知り
あ〜なるほどね、と納得。
伊坂作品を数多く手がける中村監督。
それらの作品にも通じる心地良い余韻がありました。
そしてなんと言っても菅野美穂さん
実に魅力的。
よく笑い、旦那を支えるその姿。
約束したのに・・・と涙するその姿。
透明感のある声も相まって
応援したくなる妻を見事に好演してました。
そりゃ、堺さんも惚れるでしょうよ、と。
猛プッシュするでしょうよ、と。
子供達も可愛らしかったです。

そんな心地良い温かさをくれたこの作品ですが
それより大事なものをいただきました。
「ひとつ失敗したら　ひとつ常識を捨てればいい」
この言葉です。
目からウロコが一体何枚落ちたことでしょう・・・
鳥肌立つほど脳にも心にも体にもしみる言葉でした。
ガツーンどころの話じゃないです。
忘れられない、忘れたくない言葉になりました。

自然を相手にする物語を見て思うこと。
答えはいつだって目の前にあるんですね。
世の中正解だらけなんです。
それを人間がナナメから見たり、
都合よく解釈したりして
ネジ曲がった答えが出来上がり
そのバランスの悪さが後に問題として降りかかってくる。
正解に気付けるか。
人はどんどん盲目か・・・・

予告編で涙して、絶対見たいと思っていた作品。
公開前日の「Aスタジオ」に阿部サダヲが出てきて、映画を紹介。
試写会を見たという鶴瓶師匠も絶対見るべき映画と大絶賛。
公開当日の朝、「王様のブランチ」に、主演の二人が登場して、映画を紹介されたときも
司会の市原章介もまたまた大絶賛、すごく感動したと言っていたので
私も公開初日に映画館にいそいそと足を運んだ次第です。

そんな訳で、相当なハードルの高さで見に行ってしまったわけで・・
結果、ハードル少々上げすぎたみたいです。
確かに、りんごを作ることがこんなに大変なことだって知らなかったし
農家の人たちの苦労とか
農薬散布は作り手にも危険なものだとか
けっこう命がけでりんご作りをしているんだな・・ってことは判った。
主人公の頑固な思いは、家族に厳しい生活を強いることになるけど、
奥さんがよく出来た人だから、思いを貫けたってこともあるな。

楽しめたけど、想像していたほど感動しなかったのは何故？
予告編見すぎて、お腹いっぱいになってしまったから？

　多くのことを犠牲にし、退路を断つ覚悟でないと、前人未踏の挑戦には本当に成功しないのだろうか。誰にもまねのできない探究心や血のにじむような努力には頭がさがるけど、家族に対する責任を考えると、時間はかかっても、やはりリスクマネジメントは必要ではなかったのかと思ってしまいます。

　子どもは親の苦労や努力をよく見ていて、理解して支えになってくれます。とても健気です（この映画では妻も）。だからこそ、無謀かもしれない挑戦に巻き込んで路頭に迷わすことのないように、最大限、心を砕くべきではないかと。

　また、無農薬栽培に成功してからの後日談（例えばどんな反響があり、後の農法にいかに影響を与え、どれだけの賛同が得られたか、あるいはこの成功が無農薬のメリット関する知識の普及にいかに貢献したか等）を、短くてもいいから、追記してほしかったと思います。未踏の領域を切り開いたひとりのりんご生産者の必死の努力を、単なる個人や家族レベルの美談で終らせてほしくない。

　凄惨を極めたラバウルから生還した義父（山崎努）の豪胆で寡黙な存在が、この苦労話に重みを与えています。

阿部サダヲさんは大好きですが、この映画、何故か見てませんでした。
きっとベタな涙を押し売りされるのでは？と勝手に敬遠してしまいました。
良かったです。安全な無農薬のリンゴを生産出来るまでの苦節10年・・・
おかげさまで、今年も美味しいリンゴが食べれるのです。
本当に木村秋則さんなどの皆様のご苦労のお陰なのですね。

真っ向勝負の剛速球でした。気持ち良く、上品、高潔な
作品でした。