グロリア

コワイおばさんが爽快だった遠い記憶があり、
再見したかった作品です。
オープニングの曲からもう嬉しい。（その後が恐ろしいが）
一家惨殺場面は暗示にとどまっていてよかった。

ドアののぞき穴から見える姿で登場したグロリア。
明らかにカタギじゃない。記憶にたがわずコワイっす。

でもなんてカッコイイ！
マフィアの皆さんと渡り合う度胸や目つきの鋭さも大迫力だが
女を捨ててないのがまたいいのだ。
ハイヒールとウンガロに身を包み、服もしわにならないように
手入れは怠らない。少年に「こんな若い男と寝られるなんて」てな
軽口もなんか好き。

社会からはみ出したマフィア
そのマフィアのボスに捨てられた中年女
密告者の息子
プエルトリコの孤児

マフィアに狙われた女と子供、
彼らがどのくらい生き延びる事ができるのかはわからない。
正直、ほとんど救いはないだろう。
墓石を選んでお別れの言葉をいうシーンは泣ける。

でも　肌の色も出自もおそらくは性格も
アメリカの白人社会からはとことんはみ出しまくりの
この二人が生き延びて、
いつか本物のおばあちゃんと青年になった
不思議な家族を見てみたい。そうなったと信じてみたい。

　マフィアの中で生きてきた女性、グロリアは、平気で人を撃つ。そういう世界とはいえ、恐るべしという感じだ。
　そのグロリアが、少年フィルを連れていく中で、母性本能に目覚める。それは、ベタベタに可愛がるというものでなく、ある程度の距離感を置いている。むしろ、他のレビューにもあるように、個と個の、友情に近いものかも知れない。
　余談だが、私は結構、彼女のような、姉御肌の女性に惹かれる。
　ラストでは、グロリアはよく戻ってこられたなと、驚いてしまった。この辺は、つじつま合わせだろうか。
　暴力的で混沌とした背景に対比して、変な情に流されない、二人のいい関係が、グロリアとフィルという人物を、クッキリ浮かび上がらせている。とても印象に残る映画だった。

着用してる服はウンガロなんですが、きれいですね。
それをジーナローランズが完璧に着こなしてて、かっこいいですよ。
やっぱり内容は時代を感じさせるし、現在のアクション映画と比べると物足りなさ感は否めないですが、それでもジーナローランズのかっこよさは見る価値ありますよ。
最後のシーンもスカッとしますしね。
ちなみに監督はジーナローランズの旦那さんです。

実はこれ、以前に映画館で観たことがあります。シビレましたね。小娘だったわたしは、オトコマエなグロリアにやられました。そして誓ったのよ、こんなオバサンになってやろうと。そして今、当然のごとく年齢は近づいていくけれど、彼女の足下にも及ばない私がいるわけです。
家族を失ったプエルトリカンの少年と、孤独で気ままな生活を送っていたグロリアとが、一緒に逃避行に出るのはもう運命の必然だったのかも。二人の会話は、画面を見ればコドモをいさめるオバサンの小言だけど、よくよく聴けば、わがままなオトコをなだめる恋人のそれのようだったりもします。魂が呼び合うってことかな。
ウンガロのスーツで、しっかりと足を踏み出して車に発砲するグロリアのポーズのかっこいいこと。これまたウンガロのワンピースで、かつての情夫のところへ、危険を顧みず単身乗り込むグロリアの女っぷりのいいこと。（全編ウンガロの衣装がすばらしく効果的。品がいいとか悪いとかは、この際関係ありません。）ハイヒールからのびた足が、実はとても綺麗であること。せめて、見た目だけでもあやかりたい。カサベテス監督は、自分の奥さんがいかにいい女であるかを熟知（当然ね）してたんだなと、改めて思います。
見た目といえば、チビの柄シャツが生意気で、この子の下着の柄パンツも情熱的(?)。ラテン系って、年端のいかない小僧でも侮れませんって。

いやあ、良い映画だね。
匂いがある映画というのはこういうのをいうんだな。『レオン』のナタリー・ポートマンに惚れ惚れしたあとでこの作品を見てみると、比較する気はないのだけれど、『グロリア』の子役の方に痺れてしまうのを止められない。マチルダは先々心配いらないだろうけど、こっちの子（名前は失念）は気がかりだ。ジーナ・ローランズには『シワが素晴らしいで』賞を贈りたい。彼女の演技、彼女の佇まいは強烈に誰かを思い出させる。でもそれが誰だか判らない。だから見てしまう。何度も見てしまう。そういう女性である。
一方同じカサヴェテスの『壊れゆく女』を何度も見ようとしているのだけれど、中盤に差し掛かり、何故かあんまりにもたまらなくなるので、どうしても見通すことができない。まあ、また見よう。