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■DISCAS INTERVIEW■
蛭子能収が選ぶ「取り残された」10枚
「観終わった瞬間に忘れるんですよォ(笑)」
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ネタバレしてもいいですか?
  ―― 続いて『サイン』ですけど、まさかこれを選ぶとは…。
(この先ネタバレ注意! 『サイン』をこれから観る予定の方はこちらをクリックして次の話題へ…
 
蛭子

これ、みんな「おもしろくない!おもしろくない!」って言うんだよ(笑)。
一連の事件を、どう考えても宇宙人の仕業としか思えない描き方にしてたでしょ?
それを、みんな勝手に、あれは宇宙人じゃなくて、「もっと何かあるはずだ!」って期待して観てたと思うんですよ。そしたら、まんま宇宙人だったんで一挙に引いちゃったわけ(笑)。
俺にすれば、「何でそれぐらいで引くの!?」って、言いたい(笑)。
途中までドキドキしたじゃないかって!
宇宙人ごときでさぁ、そんなにガクッってしなくてもいいじゃないって思うのよ。
だってアレは宇宙人にしなければ、理屈に合わなくなっちゃうよ。
 
――

前作『アンブレイカブル』のように、オチがすごいって最初にあおりすぎて、ハードルが上がっちゃったんでしょうね。
 
蛭子

そう、周りが期待しすぎたんだよ。でも、俺はホントにドキドキしたからさぁ、これはこれでいいと思うよ。
 
――

とにかく『サイン』は面白い、と(笑)。で、 次の『てなもんやコネクション』はどんな魅力が?
 
蛭子

この山本政志って監督はすごいんですよ!  この映画の場合、“つながり”をまったく考えてないの。海外での撮影中に、役者が怒って帰ってしまったみたいなんだけど、※4 そしたら、全然つながり気にしないで、後から違う役者を投入してるんですよ。しかも、男役だったのに女の人に(笑)。
だから、映画の途中で説明無しに、おじさんがおばさんに変わってるんですよ。観てくださいよ、前代未聞の2人1役ですよ!!
 
――

なんと常識はずれな。
 
蛭子

でも、そういう風にしてまでも映画を完成させるっていうパワーはすごい。同じ山本監督の『リムジンドライブ』っていうのも観たんですけど、これもパワーがあるんですよ。ガングロでコギャルの主人公がニューヨークに行って、ヤクザみたいなのと争いになるんですけど、そのチンピラがすっごく恐く描かれてるんです。北野武『BROTHER』に出てくるヤクザの恐さの比じゃないですよ。俺、この山本政志って人、今、日本でいちばん好きな監督。その次は、黒沢清かな。

※4:故・室田日出男が途中降板した。

殺戮なんて結局、ムナしいだけよ。
  ―― 続いての2作は、蛭子さんらしい視点と言いますか、共通のポイントがあるようで。
まずは、『アラモ』ですが…。
 
蛭子

これはね、俺の漫画の幅を広げるきっかけになったんですよ。
西部劇俳優のジョン・ウェインが自ら監督をしたんですけど、まぁ、日本に例えると、勝新太郎が『座頭市』を撮ったようなもんですね。だから、映画自体は、もしかしたらおもしろくないかもしれないけど、この映画は、すっごい残酷なんですよ。映画が3時間ぐらいあるうちの、後半の1時間は、ほとんど殺戮シーン。

アラモの砦に立て篭もったアメリカ人とメキシコ軍が戦うんだけど、その殺戮シーンがホントすごい。バッタバッタ死んでいく。観てて、「うわ〜残酷だなぁ」って思うけど、延々と殺戮シーンが続くのはさすがにおもしろい(笑)。

だから、俺も漫画でそういうシーンを描く時は、1ページで済ませちゃうんじゃなく、10ページぐらい割いてじっくり殺すようにしたんですよ。そうすると迫力が増すぞと思って。そう思わせてくれたのが、この映画ですね。
でもね、そういうシーンって描くと途中でメゲるんですよ。自分でもイヤになるんです。殺しのシーンを長々書くの、精神的に耐えられなくなる(笑)。
 
――

では、『スターシップ・トゥルーパーズ』もそういうシーンが気になると?
 
蛭子

これも残虐なんだよね(笑)。ポール・ヴァーホーヴェンの映画は好きなんですけど、 軍隊を賞賛しているような映画だから、「あんまり褒めない方がいいよ」って、言われたことがあります(笑)。
でも、俺はそうじゃなくて、軍隊をからかっているような映画だと思うんですよ。
「軍隊に入りましょう!」って、どんどん入隊者を募った挙句、昆虫型のエイリアンみたいなワケの分からない奴と戦わされて、無意味にどんどん人が死んでいくっていう、人間の命を軽々しく扱ってるすごい映画なんですよ。
ストーリー自体も変で、別に戦わなくてもいい相手と戦ってる(笑)。
無意味な殺しの残虐さだけをこれでもかと見せていくから、逆に、戦争とはこういう虚しいものなんだよという現実が見えてくるんですね。

 
 
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