DISCAS オンラインDVDレンタル 過去のインタビュー一覧


耳をすませば 黙秘 昼顔
 
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緒川さんはいつもどんな風に映画を観られていますか?
 
緒川

DVDが充実してきてからは、かつて好きだった作品を観直すことが多くなりましたね。びっくりするくらい映像がきれいになっていますし。映画館で観た時よりもきれいになっている場合もあるんですよね、どういうわけか(笑)。音までよくなっていたりして。そういうのをワーッとたくさん借りてきて、期限までに観終わらないことがよくあるんです(笑)。
 
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DISCASは返却期限がありませんから、ぜひお薦めします(笑)。お部屋ではヘッドフォンを装着して観賞されているとか。
 
緒川

夜中にお酒を口にしながら観たりすることもあるんですけど、お酒によって五感がある種研ぎすまされる部分と散漫になる部分とがあって、耳は実は散漫になるほうでして(笑)。そんなときにヘッドフォンをすると、耳だけが働く感じがして好きなんです。音が聞こえ始めると、急に色まで鮮やかに感じますよね。台詞が聞こえる聞こえないの次元ではなくて、草を踏む音などの細かいフィールド・レコーディングまで漏らさず耳に入ってくるというのが好きで、より浮き世を忘れられるというか。



自然回帰への願いを込めて。
 
――

では、今回の10枚ですが、まずは『ロビンソンの庭』からお聞かせください。
 
緒川

山本政志監督らしく、非常にシュールなギャグ満載で、キャストの個性が前面に強く出されている作品ですよね。その反面、ストーリーやテイストには今の時代にぴったりな自然回帰への願いが込められていて、私の中では13年後に発表された『Stereo Future』と共通しているなあと思っているんです。若かりし頃の町田康さん(当時・町田町蔵)※1 が観られるということだけでも私は推します。昔から役者・町田さんの大ファンなんですよ。
 
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今や日本映画を代表する監督さんだとか、錚々たる面々の名前をクレジットの中に見つけることができますね。
 
緒川

後々に知ったことなんですけど、共同脚本に名を連ねていらっしゃる山崎幹夫さんは、私のデビュー作『PU プ』※2 の監督さんなんです。『PU プ』でこだわってロケハンされた風景と似たような風景が、この『ロビンソンの庭』でいくつも見つけることができたんですよ。草に侵食された廃屋であるとか、人の高さより繁った草の茂みだとか、そういうのを見つけて私はひとりでムフフと笑うんです(笑)。同じ息吹を感じるわと。
 
――

不思議なノリの映画ですよね。
 
緒川

普通に「楽しいから」というノリでは勧められない映画なんですけど、町田さんはじめカルトなキャストの個人個人に興味を持ったタイミングで観ると面白く観られるんじゃないでしょうか。音楽をじゃがたら※3 が担当していたりと貴重ですし。
 
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そんな『ロビンソンの庭』と共通する部分があるという『Stereo Future』ですが…。
 
緒川

『Stereo Future』はですね、画面を圧倒的な自然の緑が支配していて、「緑すごいよね」「うん、すごいすごい」という会話が口をついちゃうくらい(笑)。説明抜きに、スクリーンを通して感じられる気持ちよさというのがあると思うんです。いわゆる映画的な登場人物がいる場面と、人を排した自然を追っている場面とが不思議なバランスで共存している映画ですね。
 
――

環境問題の番組を作るTVディレクターという役で、緒川さんもご出演されていますね。何か撮影時のエピソードはございますか?
 
緒川

私はこの作品の中で実際にインタビュアーとして出演しているんですけど、実は映画以前にも、中野裕之監督からの要望で彗星探索家の木内鶴彦さん※4 にお話をお聞きするために八ヶ岳まで出かけたことがありまして。監督の思い入れをずいぶん理解したうえで参加できたと思います。映画なのかドキュメントなのか、私もわからなくなっていましたけど(笑)。
 
――

お話を聞いているだけで、この映画の緑が思い出されますね。
 
緒川

この作品の楽しみ方は、ほかにもいろいろあると思います。ほのぼのとした優しいラブストーリーとして楽しんでもいいし、中野監督がこだわっていらっしゃる自然描写にただただ身を任せるように見つめていても楽しいと思いますし、脇を固める素晴らしいコメディ俳優さんたちを楽しむもよし、です。

※1:町田康さん(当時・町田町蔵)
パンクロッカーから作家に転向し、芥川賞を受賞。俳優としても『爆裂都市』『エンドレスワルツ』『黒い家』など多くの映画作品に出演。95年に町田康に改名。主な著書に『きれぎれ』『夫婦茶碗』など。緒川たまきさんとは98年に雑誌で対談している。
※2:『PU プ』
北方の島に住む少数民族プ族の里。ここにひょっこりと世界放浪をしていた乱暴者のキショウレ(佐藤浩市)という男が帰ってくる…。レジャ−ランド開発を巡っての、どこかコミカルで幻想的な冒険ファンタジー。緒川たまきさんは村の青年団長の妻ヒロミを演じている。
※3:じゃがたら
80年代を駆け抜けた伝説的ロックバンド。ボーカルの江戸アケミが90年に不慮の死を遂げる。2000年になって写真集や評伝などが発売され、再評価が高まっている。
※4:彗星探索家の木内鶴彦さん
昭和29年生まれ。発見した主な彗星に90年のチェルニス・木内・中村彗星、92年のスウィフト・タットル彗星など。過去のデータをもとに電卓で軌道を計算し、望遠鏡ではなく肉眼で彗星を探し出す独特の方法を用いる。
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