白ゆき姫殺人事件

結論から言えば私はチョー面白かったです。
終わった後も何度も反芻して噛みしめたいくらい。
エンドロールでキャストやスタッフをあれだけキッチリ読んだのは久しぶりです。因みに劇場では明るくなるまで誰も立ち上がりませんでした。
原作は湊かなえ。なんでも「告白」では読んだ後に嫌な気分になるミステリーというジャンルを世に広めたらしいです。（Wikipediaより）
結末を分かっていながら、脚本家や監督がどんな風に料理しているか確かめてみたくて帰りに原作を買ってしまいました。
中村義洋監督による本作は後味が悪くなるようなことは全くなく、
人は損得に左右され取捨選択しながら話し、記憶は自分に都合の良いように書き換えられる。そんな人間のどうしようもない気質を織り込み、コミカルと哀愁を漂わせながらの素晴らしいエンターテインメント作品に仕上がっています。
キャストも全員ピタッとハマっていて、実は私、井上真央と貫地谷しほりの顔が生理的に苦手なのですが、今回はそれが全然気にならず、かえって二人の演技が誰よりもズバ抜けて素晴らしかったです。
綾野剛君の薄っぺらい感じとか、菜々緒の「私が世界の中心よ」的なヤナ女な感じも良かった。
生瀬さんのモノマネ（？）には感心しましたが、あのワイドショー番組ってどうなんでしょう？笑っちゃいますけどなんか薄ら寒かったです。

よくあるワイドショー番組が出てきます。
この作品を観ている人には、インタビューの全貌が見えるわけですが、
制作側がどうやってVTRを編集して番組を作ってるか見せてくれ、
テレビ番組を皮肉ってます。

それから、手軽なSNSの怖さ。
「炎上」や「祭り」は、自分もネットでよく見る光景で、
あるある！と思っただけに、他人事ではないんだな、とも。
見ず知らずの人に、何の損得もないのに、暇つぶしに、傷つけられる。
途中で綾野剛演じるテレビマンがツイッターを放棄、それもアリ。
でもネットでは、全然終わってないんだなぁ。

因みに、劇中に出てくるツイッターのアカウント、実際にありました！
映画見た後は、読んで余韻に浸った。笑

菜々緒を引き立てる為か、共演者がわざと地味にしてるのかな。
井上真央も、おとなしい目立たない役を熱演。
あぁいう人いたなぁクラスに1人くらい、キャラ作りうまい。
インタビューで出てくる人も素人っぽさが上手。

正直、犯人については、予想の範囲内だけど、そこが焦点じゃないのでオマケ的な感じで見たら良いかと。

何だか奈々緒が相当な悪女。ありとあらゆる嫌がらせを周りにしまくる女。だもんで、誰から殺られてもおかしくない。何だかお似合いの役に見えてしまった。
しっかし、今や大河ドラマの主役をやってる大女優「井上真央」を何の変哲も無い顔とか地味過ぎて一切記憶に残らない顔とか言ってたけどイイんだろうか？
確かに地味な顔立ちではあるけど、そこまで言う？って位に徹底的に言われる。
でもネット社会って怖いですね。私はツイッターとかってやった事無いし、読んだ事も無いんだけど、大きな事件があると割とアッサリとネットに犯人（かも？）っていう人物の住所や顔写真、家族構成やそれぞれの顔写真が掲載されてしまうという恐怖。間違っていたらどう責任を取る積りなんでしょうか？イヤ、全くそんな事考えないから言いたい事書きたい事を吐く様に載せるんでしょうね。
この映画はある意味、そういうホラーだったかも？？

マスコミやツイッターなどの表現に一喜一憂して踊らされる人間模様を描いたスパイシーな作品。
暗くて気が滅入る話だったけど面白かった。
わたしも愚かなテレビ業界のチンケなコメンテーターなどには敵意を感じており、それらを痛烈に批判している部分には共感できた。
ちなみに、橋本大二郎なんかを観てると殴ってやりたくなる。

( ネタばれあり　)
おもしろかった。

伊坂幸太郎作品の印象が強い中村義洋監督ですが、海堂尊、そして本作の港かなえも映像化。　原作は読んでいないが、見やすくおもしろい作品にまとめ上げる手腕はさすが。

井上真央はとりたてて個性がなくて埋没してしまう、今回の普通の人のキャラはいいですね。　この人は子役からの経験が豊富で、童顔がむしろ難点だけど、演技の引き出しは多いと感じます。　　綾野剛もダメ男ぶりがいい。
菜々緒のいかにも、男好きのする、同性に嫌われる美女は、いかにも、という感じでキャラがたっています。　でもオーディションで映画初出演なんですね。

芹沢ブラザースはTSUKEMENというクラシックのユニットが演じ、雅也役は佐田大陸。　父はさだまさし。

ネット社会というのは、人々の思いのふきだまり、はけ口のようなところがあって、動き出すと誰にも止められない濁流のよう。
スタンピートのような現象がネットの怖さ。

人間というのは、関係する人によって見せる顔が違うし、とらえ方も違う。
個人じゃなくて、関係が人間というものなのかもしれない。

井上真央が綾野剛を何者かと知らずに言うセリフに、人生というのは一つじゃないと言っているようで、
ろくでもない世の中だけど、人と人のつながり、共感やいたわりに肯定的なのが中村作品。

中村作品のテーマは救済としての人生の意味かな。