ナチスの愛したフェルメール

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1945年．オランダが誇るフェルメールの作品を、敵国ナチスドイツに売るとは何事かと
ハン・ファン・メーヘレンは逮捕される。
しかしメーヘレンは「あれは本物じゃない、私が描いた贋作だ」と主張、法廷で実際に描いてみせたことで今度は「ナチスドイツを騙した男」として英雄になる。
なかなか息詰まる裁判場面のオープニング、
字幕に「事実に限りなく近い物語」と流れる。（どう解釈したものか困るテロップだ。）

極端な事を言うようだが、この話し（メーヘレンは実在した人物。最も巧妙な贋作者の1人）において私は、ナチスドイツもフェルメールさえ二義的なもののように思う。

彼は1920年代に美術の世界にデビューする。しかし期待されつつ才能を開花しきれず、
批評家たちに（古典派の受け売りだとか写実的なだけと）酷評され、我を忘れるほど
落ち込み、呪い酒浸りになる。努力して集中する仕事をする人ほど絶望するものだ。
批評家って自分は描けないくせに人を潰す言葉は簡単に吐く。１人が言うと１人も同調する。
（わら人形を作りたい気持ちだったろうなぁ、わかるよ・・・。傷つける方は何も感じないんだよ。）
メーヘレンは彼らの審美眼に疑いと反感を持ち、持ち前の努力と才能でフェルメールの贋作を作って復讐する決意をする。
（いやはや、ボンクラ批評家が若者の道を誤らせたね。しかし、フェルメールの贋作が本物として流通しはじめたらそれはそれで彼は苦しいよね。プライドの満たされようがない。）

以上のような芸術家の葛藤としての骨組みに、しかしこの映画は「女」を上乗せする。
メーヘレンが描く「女」の絵を見れば、その女を愛してるのが伝わる。

リズ・フェリンは、スカーレット・ヨハンソンをさらにスレンダーにした感じの美人だが、
今作では脱ぎっぷりも良い。全裸にナチの服を引っ掛けた「愛の嵐」風のショットは
ラストの方にしか出てこないが、金持ちに嫁いだヨーランカがなぜまだ貧乏なメーヘレンと付き合って奥様を追い出す事にまでなってしまったのか、私には今いちよく飲み込めないが、わざわざ「事実に近い」と字幕してるんでそうなのだろう。このヨーランカの官能的な絵を描いたので、批評家の夫はメーヘレンを酷評したという事だろうか。
（だとしたら公私混同でいいかげんにもほどがある。）

いろいろ不確実なレビューではあるが、２回見るという気も起きない作品ではある。
ちなみに「ナチスの愛したフェルメール」という邦題はなんのこっちゃ！と思う。
原題は「真実のフェルメール」「本当のフェルメール」という意味か。
ま、どこまでが実録で贋作部分はどこか、光の方向に注意して楽しむのも一興か。

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ファンメーヘレンは大物美術評論家の妻に横恋慕したため逆鱗に触れ、メーヘレンの絵は平凡だ、個性が無い、独創性が無いと酷評され、画家としての人生を失いました。評論家に復讐するため、フェルメールの贋作を描き始めました。フェルメールの贋作だけれども自分が描いたのだから自分の作品だ、と思うようになります。評論家をはじめ誰も見破ることのできない見事な出来でした。オランダがナチスドイツに占領されて、ナチスのゲーリング元帥がフェルメールの絵をたくさん欲しがりました。メーヘレンは次から次へと贋作を描かざるを得なくなりました。バレればただでは済まないので冷や冷やです。ドイツ敗戦後メーヘレンは裁判にかけられました。ナチスに本物のフェルメールを売って大儲けしたなら国家反逆罪（銃殺の可能性も）、贋作を売りつけたなら詐欺罪。証明するために、刑務所の中でフェルメールの贋作を描き上げました。結果として国家反逆罪は免れたものの、裁判の判決はメーヘレンの画家としての自負を打ちのめすものでした。芸術作品の本物の価値と贋作の価値の基準が曖昧でよくわかりません。映画の最後に「ポストモダンの視点から見るとファンメーヘレンの作品は芸術である」というテロップが流れます。うーん？ポストモダン？ますますわからないです。

　この映画もまた誤認させるような邦題だ。絵画の購入者がたまたまナチスの高官であったため裁判にかけられたというだけで、いわゆるナチスがテーマの映画ではない。自分を評価しない美術鑑定家への復讐のために、フェルメールに似せた精巧なオリジナルの贋作を描く画家となったひとりのオランダ人画家の話だ。

　最初は時間がひんぱんに前後するので、ストーリーが掴みにくいけれど、人間関係が分かってくると理解しやすくなる。新進画家のファン・メーヘレンは、デルフト芸術協会の賞を受賞するまでになるが、その画家として重要な時期に、自分の創作のミューズとなる運命の女性ヨーランカと出会ってしまう。たまたまその女性が、協会のパトロンであり多大な影響力を持つ人物の妻であったために、たちまち彼の画家としての評価は地に落ちる。ここにも、絵画界のパトロンで隠然たる影響力を持つ裕福な美術評論家と貧困に喘ぐ画家という惨めな関係の構図がある。

　メーヘレンが自分を評価しない人物への復讐のために贋作画家へと変貌していく過程とヨーランカとの関係が、裁判の進行と共に並行して描かれている。生前正当な評価を得られず不遇のままだった芸術家は枚挙にいとまがない。メーヘレンが贋作に情熱を傾けたのは、結局そこまでの画家だったということなのだろう。それにしても、芸術作品の真価とは一体何なのだろうかと考えさせられる。

頭の２０分くらいは観た。
で、やめた。
まったく面白くない。
「山田五郎 オトナの教養講座」（YouTube）で２回にわたってメーヘレン事件を解説してるので、そっちを観ることをオススメします。かなり、面白いですし、かなり笑えますわ。

タイトルのフェルメールに反応してレンタルした。
詳しくはないものの、アート鑑賞が趣味の一つでもある自分はフェルメールも大好きだ。
‘１７年夏のN.Y旅行では４つの美術館巡りをして、メトロポリタン美術館で５点の
フェルメール作品を見た。
昨年は上野の森美術館でのフェルメール展にも足を運んだ。
この映画にも登場した “デルフトの眺望”も見ているので、現存する３７作品中少なくとも２０点前後を見ている。
自分が好きなダリもフェルメールを崇拝している。

フェルメールの作品は宗教画やそれに近い作風の物がある。
ハン・ファン・メーヘレンと言う贋作画家の存在を知らなかったが、この映画の贋作はそちらに属する類。
“牛乳を注ぐ女”に代表されるような室内での人物描写した贋作なら技術的な面で面白かったのだが、フェルメールの技量が顕著に見られるこの手の作品の贋作は作り得ないという事なのだろうと思った。

事実に限りなく近いと言うこの映画の内容は面白かった。
実物のフェルメール作品として登場した“真珠の耳飾りの少女”や“デルフトの眺望”はコピー作品見え見えの力の無さが浮き立っているように見えて残念だった。
スクリーンを通じた観客の目には分からないと言う油断があったか。甘えがあったか。
コピーは当然として、もう少しましなコピーは無かっただろうかと思ってしまったのだ。
小津映画の“小早川家の秋”では原節子演じる未亡人の画廊のほんの数秒のシーンのために東山魁夷を含む本物を展示させる小津監督の拘りようがあった。
本作は美術品がテーマの映画だから気を使って欲しかったのだが、まあ、さすがにここは忖度すべき事柄だろう。

注目したのは、この贋作画家が即興で描いたピカソ風の筆書きや、劇中に出てきた後に妻になる支援者の妻を描いた絵の方に力量を感じてしまった。
もっとも、ここで感情移入できないとこの映画は終わりではあるが、その点で成功している。
メイキングなどの特典映像が無かったが、誰が描いたのか知りたいくらいだ。

裸の女を描くことは芸術のためだから性的な興奮とは無関係と言うのは偽善だと思っているが、それを正直に覆している描写が嬉しかったし気持ちが良い。
劇中の絵は着衣だがその眼差しは女への欲望と誘惑が表現されていた。
贋作の中の人物の目に自分の周りの人間の目を落とし込んでいるアイディアも面白い。
既存の作品のキャンバスに上塗りをして贋作である事の証拠作りは、なるほどと思い感心した。

タイトルからナチスやドイツ軍が全編に登場するものと思ったが、空軍元帥のゲーリングが後半の後半にわずかに登場するだけだった。
そのためにタイトルには違和感がある。
ゲーリングはフェルメールを愛していたか疑問だ。単なるステイタスに思える。
ナチスを騙したフェルメール、の方がしっくりする。
占領軍のナチスドイツは思ったほど横暴ではなかったようだ。
美術品などは略奪するものと思っていたが、特権があるにせよ一応それなりの金は支払って購入していたからナチに対する認識を若干改めた。


（　３件のレビュー閲覧後の感想　）

邦題に不満と言う趣旨の共通のものが２件あった。

＞最初は時間がひんぱんに前後するので、ストーリーが掴みにくい
−　同様に感じた。後半になると分かってくる。

＞結局そこまでの画家だったということなのだろう。
−　不遇に終わる画家でも真価があれば後世の人には必ず評価されるだろう。
数点が美術館に展示とあったが、そこまで止まりなのだろう。
芸術作品の真価についての疑問が複数あった。
旗を描こうが、缶からを並べて描こうがアートと言えばアートになる。
しかし自分が描いても誰も認めないだろう。
絵心無い人にはキュビズムのピカソが描けそうだと錯覚をする。
認められたものには出来そうで出来ない力がありそうではある。
難しい命題だ。

＞ポストモダンの視点から見るとファンメーヘレンの作品は芸術である
−　ポストモダニストで調べたら知らない名前ばかり出てきた。
たしかにますます分からない。

＞貧乏なメーヘレンと付き合って奥様を追い出す事にまでなってしまったのか、私には今いちよく飲み込めない
−　これも同感。描かれた絵がよほど気に入ったのだろうか。
実物を見たい。

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