さらば、わが愛　覇王別姫

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程蝶衣を演ずるレスリー・チャンの演技に息をのみ、京劇の美しさ、中国の激動の歴史に心揺すぶられる3時間です。実は、わたくしここのところ、2時間以上の映画には耐えられない体質になっているのですが、この映画は3時間が本当にあっという間です。少年時代が約40分ほどありますが、だいたいこういう一生ものを語る映画は少年時代の描写がつまらんのが常ですが、この映画は違います。同じ男同士でありながら、小豆が石頭を愛するようになる心の変化にとても素直に感情移入できます。京劇と言う非常に伝統的な世界で行われる、仲間同士のいじめやとてつもなく厳しい修行の描写に胸を締め付けられます。

そして、レスリーがすばらしいです。彼は京劇の女形の役ですが、本当に美しいこと、美しいこと。彼が愛する段小樓（チャン・フォンイー）と共に劇中に演ずる京劇が『覇王別姫』（はおうべっき）。京劇のストーリーと２人のストーリーが見事にオーバーラップしていきます。

“菊仙”を演じるのは中国を代表する女優、コン・リー。立場的には憎まれ役なんだけど、彼女の演技がこれまたすばらしいんです。女のしたたかさ、強さ、そして時にかいま見せる母性。蝶衣も恋敵なんだけど、自分を捨てた母もまた遊女であったため、心から憎みきれない。ふたりの間には、敵同士でありながら、心の底でお互いが足りないものを求め合っている、そんな不思議な関係性が生まれていきます。清朝末から日本統治時代、共産党政権樹立、文化大革命という時代の流れと共に、何が良くて、何が悪いかという価値観がすさまじい勢いで変わっていく。社会主義が台頭し、派手な衣装は民衆の前で燃やされ、さらし者にされた上、お互いを告発、罵り合う壮絶なラストシーンは息をのみます。また、劇中の京劇のきらびやかさも圧巻。レスリー・チャンが化粧をして舞台に上がったその様は、見るものを圧倒します。まるで、色彩の洪水。

03年4月に自ら命を絶ったレスリーと蝶衣の悲劇がダブって仕方がないです。そしてこれほどの演技をしているのに、レスリーが主要な映画祭でいずれも主演男優賞をとっていない、というのも本当に解せません。切なくて、切なくて、見終わった後も胸が痛い。でも、本当にいい作品を観たという至高の満足感にひたれる、壮大な大河ロマン。文句なしの5つ星です。

個人的だが、私の趣味思考を根本的に変えてしまった至極の1本。
壮大且つ過酷な中国現代史をベースに、華麗な京劇の世界の表裏、そして嫉妬に塗れた男女の情愛の世界を繊細に大胆に描いた大傑作。
高級娼婦役のコン・リーの名演も光るが、なんといっても注目はチョン役のレスリー・チャンの性別を超えたファム・ファタール的な魅力であろう。
撮影当初、この役はジョン・ローンにオファーされていたそうだが、レスリー無しではカンヌ・パルムドール受賞は有り得なかったといっても過言ではない。最近彼が投身自殺図ったニースが報道されたが、彼の繊細さ、芸へ執着、そして私生活の男性関係での悩み等、その生き様があまりにも役柄に酷似していて感慨深い。

aiaiさんを見習って、私も「あなたへのオススメ」にチャレンジ。全て見てたら、どうしょう？昔見て印象薄めもあるが、頑張ってみよう。覇王別姫はチェン・カイコー監督の最高傑作でしょう。語り尽くされてしまった位。レスリー・チャンの美しさに、魅了されます。映画の世界と、現実の世界の境界線を、越えていました。ここで再度、彼の冥福を祈りつつ。　私は、正直、子役の演技の方に、より感動を受けた記憶がありました。あの繊細さには、何といっても、かないません。成人してからのシーンに、一瞬、違和感を覚えましたが、それも一時のこと。見事に、はまらせてもらった。京劇の面白さを知ったのも、この作品でした。新作『北京ヴァイオリン』では、スケールこそ小さくなっていますが、カイコー節、健在。ぜひ合わせて、ご覧下さい。

中国に特に興味があったわけではない頃に恋人と初めてのデートで映画館で観ました（現家内です）。スケールの壮大な事、映像の美しい事、びっくりしたのを覚えています。そして中国文化の奥深さ、人間模様の多彩さ、人生とは、愛とは、を深く考えるきっかけになりました。

何より気がつくのはセリフが非常に少ない事です。映像でストーリーを語らせるというのは東洋の特徴ではないでしょうか。【日本の「マンガ」も同じ手法のように思います。この映画を観た当時は「マンガ」はまだ日本語で、「私の国では大学生がコミックブックを読む事は無い」などと言われると「マンガはコミックブックではない」と反論しなければなりませんでしたが、今や「MANGA」は世界共通語になってそんな事説明しなくても良くなってしまいました。隔世の感があります】

忘れられないのはゴン・リーが、自殺する前に主人公の方をなんどか無言のまま振り返るシーンです。素晴らしい演技、素晴らしい演出、哀し過ぎるシーンです。セリフは何も無い。あとから「あれは最期の別れの意味だったんだな」と気がつくのです。このシーンだけでゴン・リーにアカデミー賞をあげたいくらいでした。

張國栄（レスリー・チャン）は2003年4月1日に自殺してしまったそうですね。46才。もう二度と演技を見られないのは本当に惜しいことです。カルチャを越えて、日本人にもヨーロッパ人（家内です）にも伝わる名作だったと思います。どなたにも推薦できます。

この映画を観て、私は泣くことはできませんでした。
でも、迷わずに“よかった”と言える映画。
系列としては『ラストエンペラー』と同じ感じと言えばいいのでしょうか。
歴史を軸に進む物語で、感動のしどころがいまいちつかめないけれども、かなり良い大作！…といった感じでしょうか。

映像の美しさには目を見張るものがあります。
色彩を最も美しく映すことを計算されたような映画です。
あと、建物や背景が線対称に見える撮影の仕方、これも印象に残りました。

ストーリーは本当に辛く切ないものです。
それが最初から最後まで続くのですから、観ていて楽しいとは思えません。
でもぐいぐいと引き込まれていく。
ある意味“ドツボ”のような映画だと思いました。

しかし、レスリー・チャンの不思議な魅力には驚きました。
彼の作品を観るのは初めてだったのですが、なぜか彼に惹きつけられてしまいました。
人を惹きつけるオーラのようなものが出てた気がします。
彼の女形もみんなが書いてるように、ほんまにキレイでしたし。
さらに男を愛する一人の女としての男を見事に演じてました。
物腰から立ち振る舞いまで、ほんまになりきってたと思います！