|
―― |
蛭子さんもセルDVD『諌山節考』で監督デビューされたわけですが、念願の監督体験はいかがでした? |
|
蛭子 |
俺、ホントは映画館でかかる映画で出発したかったよ〜、…って言ったら関係者に悪いよね(笑)。
でもね、自分では、こんなにうまく完成まで運べるとは思ってなかったんですよ。出演者やカメラマンたちが、自分の言った通りにうまく動いてくれるか、すごく心配だったんです。
そしたらね、もう監督っていう名前が付くと、その人がどんなチャラチャラした人であれ、みんな「監督!監督!」って、一応持ち上げてくれるんですよ。それには、ちょっと関心しましたね。あっ、これだったら出来るなと確信して(笑)。 |
|
―― |
この映画を撮るいきさつは何だったんですか? |
|
蛭子 |
諌山実生さんっていう歌手を宣伝する意味も兼ねた映画だったんで、彼女の曲を使って20分くらいの短編を作って下さいと頼まれたんだよね。最初はサービスして、4曲ぐらい入れようと思ったんですよ(笑)。俺もスポンサーから言われると、ついついサービスしちゃうタチなんで(笑)。
結局、使ったのは2曲だけになっちゃったんですけど、俺は、「歌は1曲丸まる歌いきってナンボ」って思ってて、歌を使うなら、最初から最後まで流すって決めてたんです。
それで、エンディング曲聴いてみたら5分ぐらいあったんですよ(笑)。
ちょっと5分は長いと思ったけど、そのまま使いましたね。 |
|
―― |
こだわりですね。 |
|
蛭子 |
途中でハショるの好きじゃないんです。
映画の中で、チンチロリンのシーンがあって、そこは少し長いんですけど、とにかく清算までちゃんと見せたかったんです。
ギャンブルの好きな人が観ても、いい加減だなって思わないように。
だから、ひと勝負終わるまでノーカットで見せたんですよ。そしたら、案の定、みんな「長い!」って(笑) |
|
―― |
クライマックスの殴り合いシーンの珍妙なこと! |
|
蛭子 |
いや、俺としてはね、とにかく残酷にしたかったんですよ。ボコボコに殴り合って、顔中血だらけにしたかったんです。
それと同時に、カメラの位置を変えたくなかったんですよ。
実際にパンチが命中しているかのように見せるカメラ位置ってあるんですけど、それをしちゃうと全然おもしろくないと思ってたんで。
殴りあう2人を真横からしか見せたくなかったんです。
その方が、迫力もあって、芸術っぽくも見えると思って(笑)。 |
|
―― |
結果、どう見ても命中していないのに、血だけがドクドク噴き出すという映画史に残るバイオレンスシーンになった訳ですね。 |
|
蛭子 |
効果音をつければ、殴り合いしてるのは理解してくれるだろうって(笑)。
でも、さっきの『てなもんやコネクション』の山本政志監督の話じゃないですけど、「細かいことにこだわるのはやめよう」って、撮影前に全スタッフに言ったんですよ。
俺、自分自身で映画観た時に、そんな“つながり”とか気にしたことないのね。映画っていうのは、ストーリー、演技、構図、セリフが良ければいいんですよ。
細かいいところにこだわって、時間を無駄に使うのはイヤなんですよ。それよりも気分良く、早く終わった方がいいじゃん(笑)。 |
|
―― |
芸能界での反応はいかがですか? |
|
蛭子 |
佐野史郎さん(前回のDISCASインタビューに登場)は「面白い」って言ってくれました。他は聞いてないんですけど(笑)。
|
|
―― |
『虎の門』でご一緒の井筒和幸監督※6 の反応は?
|
|
蛭子 |
井筒監督にも(DVDを)あげたんだけど、多分観てないと思う。何も言ってこないもん(笑)。
『虎の門』の出演者みんなにあげたんですよ。なのに誰も感想言わないんです。多分、観てないですよ。ショックです。
俺の方から、「観ましたか?」って聞くのも悪いしさ…。もしかしたら、面白くなかったから言わないのかもしれないし(笑)。 |
|
―― |
けれど「諌山へ行こう!」ってフレーズ※7 はきっと流行りますよ。
|
|
蛭子 |
あっ!そのフレーズ!! 『ケイゾク』を撮った堤幸彦監督※8 が、「諌山へ行こう!」って言ってたって、うちの息子から聞いたんですよ。嬉しいですよ。この映画のテーマは“取り残された人”なのに、監督の俺が取り残されちゃーね。
…いやあ、でも映画の話ってやっぱりおもしろいね。…って、あんまり覚えてなかったけど(笑)。 |